内田光子リサイタル@サントリーホール 11/27

火曜に引き続き、2回目です。
一言で言えば、「大大大満足」素晴らしかったです。火曜前半の不調はどこへやら。
今回の席は2回の鍵盤が見える側「B」(一応S席です)で、やっぱり音は一階中央席より断然良かったです。

内田節爆発してましたね。一階の中央より音の分離が良く聞こえ、じっくりと聴く事ができました。

まずはモーツァルトソナタ。装飾も含めテンポルバート聴かせた濃厚でスケールというか深みが増したモーツァルト。でも静けさを十分に取り込んで空気感があるのはさすが。一瞬の間合いなんですよね。内田さんが「ライブは会場の緊張感も含めたその時みなで共有するもの」と言っているのが良くわかる演奏でした。
初期の頃の内田さんのモツは、スケールもコンパクトで端正だったのが、最近はもっと自由に伸び伸びやってますね。やっぱり名演奏家にならないとこうは好きにできないでしょうね、と感慨深くもあり。

クルタークとバッハ、最高でした。クルタークみたいな近代〜現代音楽は大抵は聴衆の集中力が著しく落ちるのだけど、(数人のオジジを抜かしては)内田さんのあり得ない音の世界に聴衆の集中力と緊張感をバシバシ感じて、音の美しさはさらに増してましたね。バッハの均整の取れた、ある意味厳しい音楽が自由かつ情感大きく演奏され、クルタークの遊び心ある自由な音の世界がビシビシと緊張感を持った音として鳴る、このコントラストが内田さんの美音で見事な構成になってたと感じましたね。不思議にスムースで流れが良かった。聴衆の反応で、すでに大成功だったと思えました。

今晩のロンドは、火曜と大違い。素晴らしかったです。内田節が最高潮に炸裂した瞬間でしたね。ペダルを掛け、音がウワーっと広がったり、ミニマルなスケールに戻ったり、もうピアノという楽器をあれだけ効果的に演奏できるピアニストは彼女しかいない、と確信する程でした。モーツァルトの音楽に含まれる感情の層と深みが訴えかけるものは無限大ですね。

シューマンは火曜日も良かったですが、今晩はもっと良かったです。火曜は大きく打って出るところがもっと自然だった気がしたけど、今晩の方が大満足。さすがに3回目なので内田さんの幻想曲の解釈にも完全に慣れ、アクセントの濃〜い演奏も余裕で楽しめました。カーネギーで聴いた時は起きて欲しくない所でミスタッチというか音がきちんと鳴ってない箇所があって、それもショックでしたね。シューマンの曲は右手で大きく移動しながら輝かしい和音を身振り大きく鳴らさなくてはならないのですが、内田さんの右手小指の最高音が綺麗に鳴らない危うい箇所が今回は一つも無く、きちんと輝かしく大きな和音と右手小指の旋律が聞こえてました!これぞシューマンです。(2楽章でチョイミスタッチはありましたが全然メジャーじゃなく気にならなかった。)

アンコールはシューマンの謝肉祭の最後から2番目くらいのやつ。(名前がわからない...)極上の軽さで素晴らしかったですよ。内田さんの謝肉祭は素晴らしいですからね、一度ライブで完全に聴いてみたいですね。

アンコールの最後はいつものモツの第二楽章ではなく(えええ!)ベートーヴェンの30番(Op.109)の第一楽章でした。もう絶品も絶品。そのまま曲を完奏して欲しかったです。以前内田さんの講演会を聴きに行った時に、質疑応答でベトの最後の3つのソナタの中で強いて選ぶとしたらOp.109が好きだ、と答えてた内田さん、素晴らしい演奏でした。これは言葉で言うより、一緒にその場にいた観客だけがわかるものかと。

吉田秀和さんらしき人が居たけど、そうなのかな...
それからイアン・ボストリッジが居た。マスクして一人でアークヒルズを横切ってたけど、あの長身は隠せまい... 今日本にいるのか... 内田さんと友達だろうしね。

取り急ぎ、走り書きで書いてしまったけど、今晩は大正解!でした。