五嶋みどり:バッハ「無伴奏ソナタ第2番」

五嶋みどり バッハ/バルトーク


五嶋みどり内田光子同様、寡作な演奏家だ。
それだけにリリースするディスクは演奏クオリティが非常に高い。

2年ほど前に発売されたこのバッハの無伴奏ソナタ第2番とバルトークソナタを収録したこのディスクも素晴らしくて、特にバッハの無伴奏はこれまでの名演とは一線を画す独自の解釈と悟りの境地に達しかかのような五嶋の名演で、クレーメルの新盤購入以後「バッハの無伴奏はもういいかな...」と思っていたのに五嶋盤の全集が揃うのが今から待ち遠しいところ。


今はまだソナタ第2番だけだが、出だしの数秒だけで引き込まれてしまう。
五嶋みどりは以前から弱音や無音といった静寂な部分で雄弁に語る事ができる希有の表現者だが、今回はそれが余りにも美しく、まるで端正かつ伸びやかな筆はこびを墨絵に見るかのような演奏なのだ。ここまでシンプルかつ静けさに満ちた佇まいは、クレーメルの新盤で縦横無尽に表現しつくした伽藍のようなバッハに慣れた後では余計に衝撃的だった。
緻密で完璧な構成の中を縦横無尽に飛び回るクレーメルのバッハに対して、一筆書きの潔さと余白で語る凄さが五嶋のバッハにはある。


とにかく買って聴いてみて欲しい。これまでに無い静かな精神性に満ちたバッハ。心が洗われます。