内田光子 モーツァルト協奏曲を弾き振りで再録(ライブ)

内田光子:モーツァルトピアノ協奏曲



8月初頭にリリースされていたアルバムですが、買うのを忘れてました。
で、最近気づいて買ってみたけど、このアルバムは色んな意味で非常に良いです。

この録音の話を最初に聞いた時は思ったんですよ。
すでにテイトとの録音が完璧なのに、なぜわざわざ... モーツァルト再録する前にバッハとかベトのソナタとかドビュッシー前奏曲とか録音してくれ...と。



テイトとのモーツァルトは美しくてオケとのバランスなども最高だった。
その結果、内田&テイト盤は世界のスタンダードになったわけで、それは生誕250年のモーツァルトイヤーの最重要コンサート(ザルツブルグでの生誕祭、ベルフィルのジルベスター)でのモーツァルト協奏曲へのソロイストに選出された事でもわかるはず。



さて今回の再録音の目玉は、1.内田が弾き振りしていること、2.ライブ録音であること、3.オケがクリーヴランドであることでしょう。その点が正に今回の演奏の良い部分につながっているなと感じた。もちろんテイト盤に劣る点もいくつかあったけど...



良い点は、前回よりも自由自在な表現で全体にモーツァルトのエネルギーと喜びみたいなものが漲っていること。当然ライブの影響もあるでしょう。特にそれぞれの協奏曲の第三楽章が素晴らしい。音楽が溢れ出てくるような喜びに満ちている。これには各パートの表現がより深く前に出てきたことにもあるかも。(副旋律的なメロディも色濃く出ていてナカナカ良いです。)
そしてそれ以上にオーケストラの表現が一段深くなっていて、全体が大きいうねりを生み出しているような感覚がとても良いです。
テイト盤の宝石のように美しいモーツァルトより、たぶんモーツァルト自身がイメージしていた音楽に近くなっているんじゃないかな、と勝手に思い込んでます。笑
それからライブ演奏なだけにカデンツァの凄さがやっぱり突出してる。内田光子カデンツァ演奏はブラックホールのように聴衆を吸いこんでしまうような凄味がありますね。



残念な点は、弾き振りのせいか、忙しいところでのピアノ演奏が以前のように「完璧」ではないこと。テイト盤のような、速いパッセージでの真珠が転がるような美しさはあまりなく、全体のうねりで押してる感じがしました。



ま、何はともあれ大満足。誰にでもオススメの素晴らしいCDかと。
この素晴らしさなら22番とかも絶対リリースして欲しい。